1年半ほど前から急速にWebtoonの話題が多くなってきた漫画業界。
そのWebtoon事情について私が知っている状況も含め、今後について考えてみたいと思います。
Webtoonサービスについて
Webtoonがとにかく稼げるといった評判より、様々な企業が新規参入の準備をしているといった話を聞くようになりました。
2022年5月に株式会社アカツキ様(Web)が『HykeComic(ハイクコミック)』(Web)といったWebtoon作品のみを取り扱うプラットフォームを発表されていました。
これまでWebtoon作品を提供するサービス(コミコさん・ピッコマさん・LINEマンガさんなど)では従来の雑誌などで掲載されている漫画作品も一緒に取り扱っている状態でした。
色々な漫画作品が読めるサービスとしては非常に良いサービスだと思っていますが、横に読む漫画や縦に読む漫画が混在してしまうため、読者としてはどっちかに統一してくれと思ってしまう感じはありました。まだまだWebtoonに特化したサービスは無い中でも、Webtoonが儲かるという話だけは業界の中で広まっていると感じていました。
そこで発表されたHikeComicなわけですが、なんとなく同様なサービスを始めようと動いている企業はまだまだあると感じています。
さて、そこでこのWebtoonが儲かるという話、どこがどのように儲かる話なのか、考察してみたいと思います。
(実際に現場で働いたという方の話も聞いた情報もありますが、内部で働いたことは無いため、憶測なども入っていることはご了承ください。)
Webtoonが注目されるようになったきっかけ?
正直なところ、縦読み漫画に対しては、そこまで日本国内で話題にもなっていない印象でした。しかし、2021年から急に話題に上がるようになってきたました。
そのきっかけとなったのは、業界内で漫画を制作するソフトウェアとして広く浸透しているセルシス社のClip Studio Paint(通称クリスタ)によるものではないかと思っています。。
2020年12月のクリスタのアップデートによって、キャンバスを作成する際の設定にWebtoon用の設定が追加されました。
これによって、はじめてWebtoonといった単語を聞いた人もいると思います。そして、一気に業界内でWebtoonへの興味が広がり話題に上がることが増えてきた印象です。
Webtoonの現場について
私が聞いた話では、Webtoonの制作現場は、漫画制作チーム(サービスを提供している社内での事業部など)が作られ、分業化されているといった話を聞いています。
企画・原案・プロット・ネーム・キャラ作画・背景作画・着色といった業務が分業化され、効率よく作品を提供していくことができる仕組みが出来上がっていることにより、作品を安定供給し、定期的に作品を発表することができるようになることで、各プラットフォームへアクセスさせる依存度を上げることで収益化を図っているようなイメージです。
制作現場の流れとしてはアニメを作る現場に近いのではないでしょうか?
これにより、安定的な収入を得ることが出来る仕組みが出来上がることで、漫画業界の変化を感じ始めています。
これまでの漫画制作現場の実態
漫画の難しいところは、漫画家としてデビュー・連載をしたとしても、いつまで稼げるかわからないという不安が常にあること。
アシスタントに至っては大半の方は個人事業主としてやっていくしかありません。レギュラーとして作品に携わったとしても、作品によってはすぐに終了してしまったりと、現場を転々とするしかないような状況になってしまうため、安心して仕事をすることが出来ないといった問題がありました。
これを改善していくためには、漫画現場をチーム化し、得た収益を平等に分配するような形が出来上がるのが理想的な形です。しかし実際のところは、原案・話づくり(ネーム)・キャラ作画といった作業を一人でこなす作家先生の負担が大きいために、そうはなり難い現状でもあると感じます。(漫画家になって稼ぎたいといった方が大半かと思うので当然と言えば当然なんですが……。)
変わる漫画制作の現場?
そういった漫画業界の形だったものが、この7~8年くらい前あたりから企業内で内製するような形でチーム化され、漫画を企画として考え、すべての作業を分業するような形で漫画を作成するような仕組みで制作され、Web配信する形が出来上がってきているようにもなりました。
この流れはアシスタントとしての仕事の先行きに不安を感じ、現場を離れた身である個人的にも素晴らしい取り組みだと感じています。
給料をもらって漫画を描き、人気が出て売れてきたらボーナスなどで還元される、素晴らしいです。
これはWebtoonの現場でも同様です。むしろWebtoonの作品は個人で提供するのは難しいのではないかと思います。
そのため、Webtoonが注目され様々な企業がWebtoonの制作チームを立ち上げているのがここ最近の流れです。
しかし、これが本当にうまくいくのかというと、コンテンツ・作品次第なのが難しいところが漫画業界です。
そしてこのように分業化されてきた場合、コンテンツを作り出すための大事な役割をするのがどこになるのか…
Webtoon現場の求人状況
様々な企業が求めている人材。それが見えてくるのが、求人情報でもあります。
分業化されたWebtoon作品を作るにあたって今一番企業が求めている人材はどんな人材なのでしょうか。
そこで、ちょっと求人サイトを検索してみたところ、出てくる出てくる、Webtoonの求人。
あくまで一部ではあるかと思いますが、この情報を見る限り作画よりも編集やディレクターといった職を重視しているような求人が多いようにも感じます。(まぁ、作画関係はアシスタントなどの知り合い周りでつながってるので、すぐ見つかるというのもあるかもしれませんが…)
Webtoonのような分業化された環境の中では、それを取りまとめる監修者(編集・ディレクターといった職)が重要になります。
本来、漫画家が描きたいものを描いて持ち込まれた作品より、その作品の面白さを見出して導いていくのが編集者の仕事だったと思います。しかし、漫画作品になる前の企画を考えていくのが大事になってしまったため、作画する人よりも企画力を持った人が求められるような求人になるわけで、当然といえば当然な結果なのかなとも思える求人状態です。
一時、私の知り合いでWebtoonの現場でネームをかける人がいないか?といった相談を受けたこともあります。
しかし、色々とお話をしたりしているうちにネームを作れる人よりも、企画を考え、監修する人が重要だという結論に至り、編集者のような人材を探すといった話になってしまいました。
Webtoon現場の実態
Webtoonの場合、従来の漫画ネームよりもコマの使い方が重視されるないため、話の展開ができてさえいればネームに起こすといった作業はそこまで大事ではないようになってしまったのではないかと思ってもいます。(当然、見せ方構図などにこだわるといったのものはあると思いますが、そこは分業された現場では絵を描く人の能力になってしまっているわけですね)
そのため、Webtoon求人を検索すると作画をするような人の求人はあんまり見当たりません。
※この記事を書いている数日のうちに、少しだけ求人の情報にイラスト・漫画アシスタントといった内容が増えてきたような気もします。(憶測ですが、株式会社アカツキさんが出されたコンテンツのクオリティ重視な傾向に触発された可能性もあるかなと思いました。)
ですので、背景を描くためのアシスタントをやっていた人間の出る場が結局どうなるかというと、アシスタントでしかないような扱いを受けるわけです。
事実、あるWebtoonを新規で立ち上げようとしている企業から依頼を受け、Webtoonの仕事を請け負った友人の話を聞いたのですが、背景作画は外注依頼で日給扱いにされているといった話でした。
これでは今までの漫画作成現場と何が違うのか…?対して変わっていないような気もしてしまいます。
当然、内部に入り込むことさせ出来ていれば正社員として雇用してもらうこともできると思いますが、作画スタッフとして入り込めるのはあんまり多くはなさそうです。
今後について
Webtoonと言う配信形態が今後どのような展開をしていくのか、現場を離れた人間としては楽しみではあります。
日本国内よりも中国市場を視野に入れているという話でもあるため、合致すればすごい市場になるのは当然です。そうなった時、作品に携わった方々に還元されるような仕組みになっていると良いですね。
少しでも作品に携わった方々が少しでも安心して作品に携われるような現場が生まれていきますように。
コメント