漫画・イラストなど、何かを作画する時、写真を資料として参考にしてみながら描くことが多いと思います。
その資料写真を撮影する時に意外とやってはいけないことをやってしまってることがあるので、それについて紹介してみたいと思います。
写真を正しく理解する
写真は、レンズによって出来上がる見え方が大きく変わります。
決まった範囲の中(スマホの画面など)にどれだけの情報を写し出すかを決めるのがレンズの広角と望遠といった種類となります。
広角と望遠
細かいことを抜きにしてざっくりとレンズの性質を開設すると、人間の見た目に近い形で写真を撮ることができるレンズは標準レンズと言われ、それよりも広い範囲で撮ることができるレンズを広角、遠いものに注視するように撮影できるようになるのが望遠となります。
一般的に焦点距離が50mm前後付近(おおよそ40mm~55m)のレンズが標準と言われます。
それ以下が広角、それ以上が望遠となってきます。
広角は、画面の中に多くの情報を映しこむことができるといったメリットがある反面、被写体に近寄ると大きく形がゆがむ傾向になります。
望遠は、遠くのものを映すことができる反面、立体感が損なわれる特徴があります。
まずはこの特徴を押さえておかないと、資料写真を正しく使うことはできません。
そしてここで問題となるのが、写真を撮る時の機材となります。
撮り方で形(見え方)は変わる
最近は写真をスマートフォンで撮る方が多くなっています。
そのスマートフォンの特徴として、搭載しているレンズの種類は広角が多いということです。
特に最近は、超広角域のものが多くもなっています。
下の3つの写真を見てみてください。



この三つの写真は、どれも同じスマートフォン(Xperia ZX premium)で撮影をしています。この機種は、2017年に発売され、現在の主流のような3眼レンズではありません。そのため、焦点距離は22mmの固定となります。
この焦点距離22mmは、いわゆる広角と言われるような写真を撮影することができますが、フィルム時代のカメラからすると超広角域に近くなります。
そのため、撮影の仕方によっては形の歪みが強く出てしまい、絵的な表現で言えば、パースがきつく感じる絵が出来上がっていることになります。
その写真は、被写体に近づけば近づくほど、歪みは激しくなり、正しい形の認識がし辛くもなります。
被写体を中心にとらえ、真正面から撮るようにしたため、この3つはそこまで違和感はないかもしれませんが、少しでも曲線的な形が入ったり、撮影域の端っこはゆがみが出やすい傾向になります。
ちなみに、Xperiaよりもさらに広角な超広角レンズを搭載したiphoneなどではどうでしょうか?



iPhone11 proの超広角14mmレンズを使用して撮影してみました。
いかがでしょうか。
接写した際のパースのかかり方は激しく、元の形がわかりにくい状態となってしまいました。
使用している道具・機材の特徴を理解しておく
これらのことから、資料写真を撮るときには、少しでも撮影機材の特徴を理解し、撮影の仕方も少し気を付けておかなければ、ご自身の描く絵にも影響を及ぼします。
特に広角の絵はカッコよく見えてしまうため、撮影する際にも広角で撮りたくもなるのもわかります。
しかし、写真を撮るためのレンズは、凸レンズと凹レンズの組み合わせで成り立っています。
ですので、四隅に行けば行くほど歪みが発生しやすく、広角レンズになればなるほどその歪みは顕著になります。
そして、スマホのレンズは小型なので歪みも大きく出てしまいやすい傾向です。

その歪み具合は、このような方眼紙を撮影したりするとはっきりと確認することが出来ます。
最近のカメラやスマホでは、このゆがみを補正するようなものもありますが、あくまでレンズの歪みを補正するものなので、広角による歪みは変えることはできません。
必要とする情報を使い分けて正しく記録することが大事
ここまで、広角は資料写真には向いていないといった内容で進めてきてしまいましたが、資料写真にも
形を認識・把握するために使うものと、全体の雰囲気・構図のために使うものの用途もわかれるかと思います。
前者の用途であれば、確実に広角は避けたほうが良いかと思います。
しかし、全体の雰囲気や構図取りといった理由であれば、広角はカッコよさの参考にすることもできるため、使うべきだと思います。
最も大事なことは、撮影した際にどんな設定・機材で撮ったものなのかということです。それによって得られる情報が変わるということを知っておきましょう。
カメラに興味を
絵を描くということは形を捉えたり、構図を意識したりと非常に様々なことを意識しないといけません。
そしてその補助的に資料写真を使うわけですが、簡単に写真を撮ることが出来るスマートフォンの登場により、思ってる以上にそれで撮った写真に引っ張られた絵を作りがちになっているようにも感じます。
もしも、写真資料を撮って写真を参考にすることを考えられるのであれば、カメラというものに興味を持ってみると、絵を描く時の考え方にも参考になると思います。
そして、一眼とまでは言いませんが、出来ればスマートフォンではなく、コンパクトデジタルカメラなどの光学ズームレンズを搭載したようなカメラで撮影をしてみてください。
(たいていのスマホはデジタルズームで画面を引き延ばしているだけなので画質も落ちますので)
漫画などの背景絵の基本は、形を捉えることになります。
正しい形を捉えることが出来るように普段から資料写真の撮り方も気にしてみてください。
アシスタント経験者からの小言でした。
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